覆面作家企画4Bブロックの感想です。
ネタバレありの超個人的な感想ですので、ご了承ください。
B01 夢追い人の系譜
子供にとって、地図っていうのはそれだけで不思議で楽しい冒険の道具ですよね。
地図を片手に冒険の旅! なんてわくわくします。
特に、自分の身近な人がそれにのめり込んでいたら、興味はつきないものですよね。
地図に祖父の面影と背中を見るバンリも、いずれは誰かに冒険の楽しさを教える人間になるんじゃないかなと思います。
そして、アリアがめちゃくちゃかわいかった!
B02 a Fairy tale, a Fair liar
おばあさんの問わず語りに思い切り引き込まれました。
ある種のシンデレラストーリーですが、結婚したところから思ってもいなかった悲劇が始まるところが特に。
王妃には、人を惹きつけるものすごい魅力があったんでしょうね。最初は意地悪な義母までちゃんと味方になってるし。
個人的には、救出にきてくれた裏切り者の忠臣も、王妃の存在があったから戻ってきたんじゃないかなと思いました。
あと、居眠りして見逃してくれた門番とのやりとりがすさまじくカッコよくて、画面の前で思わずガッツポーズしてました。
なんか、カッコいいうえに凄く逞しいんですよね。
彼女はどんなことがあっても幸せな人生を歩んでいったんだと思いますね、ほんと。
B03 地に下る
恋は盲目というか。
間違っているとわかっていても、このままじゃだめだと思っていても、「恋」という不確かな感情にまかせて突き進んじゃう人生ってあるんだよなあ、と思いました。
たぶん、お互いにわかった上で引き返せない二人なんだと。
でも、それはお互いが存在していることが前提で、死という決別が訪れる覚悟ができているつもりでも、いざそのときになると、全然覚悟なんかできていなかったという。
本当にせっぱ詰まった状況までこないと軌道修正できないくらいにすれ違っていた二人、というのは読んでいて切なくなりました。
本当によかった、玲明が生きていて。
B04 坂を下る
引っ越しという住環境が一転することによって忍び寄ってくる不協和音。
最初は人影、そして声。
ひえええ、こわいよう! と思いながら読んでおりました。
特に、主人公がその家にまつわる過去を調べ始めたあたり。そして、異様な状況にだんだんと追いつめられるあたり。
この家族はどうなってしまうのだろう、とはらはらしました。
そうしたら。
ラストのどんでん返し!
主人公の「嘘」にまんまとミスリードされてました。
……でも、これも十分こわいよー!
B05 暗い道を照らすのは……
うわあ、なんて健気なんだ、きょーくん。
旅人さんに一生懸命呼びかけているあたりで、不覚にもほろりときました。
なんか本当に北極星の伝説みたいなかんじでありそうだなと思いました。
ただ、ひらがなとスペースの文章はちょっと読みにくかったです。
B06 in ruins
禍つ神となってしまったシミュラクラを敵と狙うケディッドの真剣さと裏腹に、それが空回りしてしまう状況に、どこかもの悲しさとか空しさが募るストーリーでした。
「神」とか「宗教」を造った昔の人たちは当然知っていた裏事情が消え、いつしか表向きのアピールが絶対的な信仰へと変化してしまう。
このお話の場合、造られた「神」のプログラムも含めてぞっとする怖さがありました。
神話の背景を知って、生き残ることを選んだケディッドのこれからを読んでみたいです。
B07 俺は不良
ちょっ……!!
最初から鷲掴みにされるような展開!
携帯で読んでたんですが、吹き出すわニヤケるわ、笑ってしまうわ、非常に怪しい人と化してしまいましたよ!!
なんだこの、「不良として」の道に外れまくった優等生くんは(あ、言っちゃった)!
子猫拾っても言い訳しない! ちゃんと授業をさぼる!
ていうか、遅刻ぎりぎりは遅刻違う! 宿題も予習復習もやらないよー!!
たぶんみんなが暖かく見守ってくれてたんですよね。「それ、不良違う」という突っ込みを暗黙の了解で飲み込んでくれるくらいには。
本当に笑わせてもらいました。
A08 分岐エゴイズム
青春だからこその友情と恋慕の葛藤、共感と歯がゆさを思い出しました。
どちらを選ぶか、なんて10代には結構キツイ条件ですよね。
いったん踏み出しちゃったら二度と元の関係にはもどれない。恋なり友情なり、選んだ方が望み通りにいくならまだしも、相手がそれに乗ってくれなかったら、すべてが崩れさってしまう。
特に学校とか人間関係がその中で閉じちゃってますしね。
うー、こういう経験が人を大人にする、とかきれいな言葉でまとめるには、きっつい展開だったなあと思いました。
せめて、彼のこの先の出会いがよいものでありますように。
A09 我往此道
って、どこに行くのよこの子は!
読みながらつっこむこと数度。
青春特有の暴走にしては、後遺症というか、後年振り返って身もだえする要素がてんこ盛りな感じのお話でしたね。
いや、何事にも極意っていうものはあるだろうし、道を極めるのはそれなりの困難を伴うものではあると思うけれども。
なんかちがうだろー、とつっこまずには居られませんでした。
身近なところに達人がいるからってあきらめるのかと、ちょっと説教したくもなったり。
オチに向かう勢いとおもしろさはとても楽しかったです。
A10 夢の中、水の彼方、道の果て
出だしの描写から王道ファンタジーなのかな、というのが第一印象でした。
穴堀り屋、と呼ばれているということは考古学者さんなのでしょうか。どっちかというと現場の発掘担当の人みたいですが。
夢の中で出会う門番との会話は、それが夢物語の幻想のようで、すごく不思議な感じがしていました。
と思ったら、ラストでああやっぱり、と。
約束守る穴掘り屋も、ちゃんと待っちゃう(文句付きだけど)もめちゃくちゃ好きです。
B11 本とキム子とスイカバー
ノスタルジー漂う夏休み! こういうの好きです。
子供は子供なりに、子供らしい裁量でいろいろ葛藤してるものなんですよねー。
とくに、ローティーンは女の子の方が早くませるから、同年代の男の子としては置いてきぼりにされたような疎外感もあるんでしょうね。
わざとじゃんけんに負けるキム子の心境が、他人の目から見た描写でも鮮やかに伝わってきました。
子供にとっては、町の外から来た子は異邦人と同等の特滅扱いにもなりますしね。
うん、あれだ、頑張れ少年。
A12 光の道標
すごくきれいなお話でした。
硝子の世界である光と、それを彩る手作りの万華鏡と、青年の想い。
おもわずうるっときてしまいました。
彼らはずっとこんな風に寄り添って生きていくんだな、と、幸せになりました。